ほしあかりをさがせ
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デルタ

Author:デルタ
四十才代、三重北勢在住の技術者です。ちょっとだけ営業マンもしてました。
ネット上では、磨崖仏の研究家としてごく一部の人から認知されてる(らしい)。磨崖仏・星見・歴史小説創作については、本館のHPを見て下され。

他の任務:東洋的リバアタリアニズムの確立。
       日本まんなか共和国 勝手に観光大使

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清州古印刷博物館(磨崖仏またも海を渡る 史跡編2)
14世紀後半、Cheongjuで、比丘尼ひとりが願主になり、師の白雲和尚の禅の教義の解説を印刷した。題名を「佛祖直指心体要説」という。本の質からいって、大部数刷られたわけではない。しかし、それが金属活で刷られたこと、しかも下巻の1冊だけとはいえ20世紀まで残ったことが、思わぬ価値を生んだ。
よく知られたグーテンベルグの活版印刷による最初の刊行物「42行聖書」が、1455年刊行。それよりも70年以上早い時期の金属活字での印刷物が、20世紀になって存在が確認されて、歴史が塗りかえられた。
(もっとも、このあたりいろいろ微妙な問題が出てくる。Ganghwa島にGoryeoが都を移していた1234年に「評定古今礼文」という書物を印刷するのに、金属活字を鋳て用いたと記録が残っていたり、オランダ人のコステルという人が1420年代に活版印刷術をすでに用いていたとか、調べだしたらきりがない。深入りしないことにする)
ともかく、確たる証拠とともに、金属活字印刷のルーツといえるのが、韓国のChungcheongbuk-Do(忠清北道)の道庁所在地である、このCheongjuという町。
というわけで、市内を走るバス会社のひとつが、その本の略称「Jikji(直指のハングル表記*1)」となっているほどの、たからもの扱い。
そして、この書物を印刷した場所「Huendeok(興徳)寺」の跡地に、今では印刷技術に関する「古印刷博物館」が作ってある。

(*1)ローマ字で書くとこうだけど、日本人の私にはチッチと聞こえる

泊まった市外バスターミナルからは、少し北へ歩いて、東西に走る4車線の大通りから東方向への市内バスに乗ると判りやすい。高層アパートが並んで建つ団地の中から、9時過ぎにバスに乗った(と書くけれど、お目当ての路線のバスが来たのに立ち後れ乗り損なう……という例によって韓国で起こし勝ちなミスを2回して、30分はロスしたことを告白する)。
金曜日のこのような時間帯なのに、町にもバス内にもかなりの人出がある。メーデーだからかな、とか思いながら、Chungbuku-Cheyukgwan(忠北体育館)の前で降りた。
体育館ではイベントの準備中だし、辺りには体育系の高校などもあり、おまけに体育館の東隣の初等学校では運動会をしている……そんなこんなで人通りが多いらしい。
体育館から北へ5分くらい歩いた突き当たり、通りから奥まったところに、円形の建物を3つほど組み合わせた白い建物群がある、それが目的の博物館だった。

時刻にして9:30頃だったろうか。平日の開館間もない時間帯だったのもあり、職員さんらしき人たちが数人、玄関近く右手カウンターに座って居られる。それを見ててっきいり入場券売り場と勘違い、財布を取り出すと、向かい側を指さされた。……券は左手のカウンターで買うのでした……これもアリガチな間違いということで(汗)
私の「オルマエヨ」との発音で判ったのか、今度は右手のカウンターのひとりが、私に「日本の方ですか」と聞いてこられた。わりと恰幅のいい眼鏡を掛けた男性だった。急に緊張が解けた私(何しろ、一昨日の晩Seoulのユースホステルで相部屋だった人と話して以来、日本語を聞いたこともなかったのだ)。
その紳士、Chi BokHyunさんに、なんと案内いただけることになった。

最初にビデオ(10分強)。そののち、敷地内に再建されたHuendeok(興徳)寺を一巡り。……といっても、四天王寺的な伽藍が廻らせてあったという周囲は礎石が残っているだけで、真新しい石塔と金堂が再建されているだけで、その金堂もベンガラを塗り直すとかで、シートを掛けられてしまっていた(つい20分前までは、足場も組んでいなかったのに、博物館に入る前に見ればよかった)。金堂は周囲80mあるかどうかのごく小さいものだった。

 さらにChi BokHyunさんによる館内案内が続く。展示は大きく分けて(1)Huendeok寺の遺物、(2)直指のときの金属活字製作・印刷工程の解説、(3)印刷技術の変遷(統一新羅期から20世紀までの印刷技術を展示)からなっていた。
そのうち印象的だったものを。

(1)Huendeok寺の金堂に据えてあったと思われるシビ(高麗時代)。形は奈良東大寺などで見られるものと同じ。だが、高さ60cmくらいある。周囲80mくらいのお堂にこんな大きな物が載っていたのか?Chi BokHyunさんも、大きすぎるでしょう、と笑っておられる。(翌日、BuyeoのJirim寺址に行き、復興した金堂を見た。やはりこれも、日本のバランスに比べると大きなシビがのっていた。韓国的デザインということなのかも)

(2)活字は、「蜜蝋鋳造法」という方式で鋳る。最初に蜜蝋で作ったブロックにハンコを彫る要領で字を陽刻する。そのハンコを粘土で隙間なく取り囲み「型」を作る(現在の樹脂成型の型でいう「砂型」と同じ)。その「型」全体を熱することで、蝋のハンコが融けてくれるので、それを流し出すと、雌型が内側に形成されるので、そこへ溶融銅を流し込み活字にするというもの。
(今でいう砂型成型という鋳造方法と同じやりかただ。ただ砂型でなく、粘土型を用いることが違うけれど。この技術ってこれほど古くからあるのか、とその時はおもったけれど、なんのことない、青銅器文化の時代でも、青銅器はこうやって作ったのでしたね)
技術としては、500年以上前のことと思えないほど既視感があるのだけど、蜜蝋というのがクセモノ。ミツバチの巣を煮ることで採っていたらしく、その作業のジオラマを見て、天を仰ぐ。ミツバチの巣を集めるなんて、そんな怖いことを!

(2-2)出来た活字を使って、「直指」の版を組む工房も再現してある。活字を仕舞う棚には、引き出しが多数設けてあり、文字毎に分けてしまってある。一方、版に関しては、木の枠の中へ活字を並べていくことで作っていく。これまた一昔前まで印刷所でやっていた作業そのものだ。が、一つだけ、私の予想を裏切ったものがあった。そうして組んだ版に、直接墨を塗り紙を当てる、という完全手動で印刷していた、ということ!確かに、この頃の「本」が市中に売ることを目的にして作るわけでなかったから、これでいいのかも知れないけど……、やはり、「近代」への道は遠い……。

(2-3)今はフランスの国立図書館に実物がある「直指」の下巻。複製本がこの展示コーナーにもある。通常最後のページとして有名になっているのは、

「宣光七年丁巳七月 日 清州牧外興徳寺鋳字印施」
と終わるページが紹介されているけれど、この裏に、奥付に相当するページがある、と紹介してあった。
奥付にいう。

「縁化門人 釋”粲*2” 達湛
 施主 比丘尼 妙徳」
*2この文字の偏に”火”の字が入ります

施主がひとり……、しかも比丘尼(女性の出家人)。
どんな人だったのだろう、このことが妙に気になって、「佛祖直指心体要説」の現在訳本を買うことになった(後述)。

(3)渡り廊下の壁に、印刷技術についての年表がある。木版印刷のルーツという意味では、日本・韓国ともに、「陀羅尼経」の刷り物ということになる。日本だと「百万塔陀羅尼」(770年頃)、韓国(Sinra)だと「無垢浄光大陀羅尼経」(706年に一度刷られ、現存するのは750年頃のもの)……このあたりは、同じ信仰に基づくまさに「兄弟」なのだろう(ひょっとすると、刷った人すら近縁同志だったりするのかも)
不思議なのは、中国。最古の木版印刷物が、「金剛般若波羅蜜経」(868年)唐の真っ直中まで印刷の必要がなかった?中国の仏教界には、「お経は手で筆写するもの」というシキタリが強固にあったのでしょうか……。

その他、
売店で、クリアファイルと本とを購入。
クリアファイルは、「直指」の”最後のページ”が印刷してあるもの(W1000とお手頃です)。本は、本当のところ、「直指」の原文(漢文)が欲しかったのだ。私だって、在家とはいえ6年仏教系の中学・高校でミッチリ経典を学んだのだから、漢文ならなんとかなる。まして、一度は姿を消しかけた「高麗仏教」がどんな姿だったのか、思いを馳せるにはいい材料だとも思ったのだ。それに、施主である妙徳さんのことも気になるし。
が、当然のように、そこに置いてあるのは、現代訳本(つまり、韓国語)のみ。脚注も沢山あるし、適宜漢字も添えてあるので、買うことにしました。
この本程度は、早く読めるようになりたいです(辞書を引きつつ約10時間、ようやく序文が終わりました……)

写真は、Chi BokHyunさんに撮ってもらいました。博物館の玄関です。
古印刷博物館(Cheongju)前にて
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テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

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